研究室の紹介


高瀬・江尻研究室では、将来のエネルギー源としての 核融合 を念頭においた高温プラズマ研究を行っています。 プラズマ は 荷電粒子が電磁相互作用により複雑に影響を及ぼしあう多体系で、 非線形複雑系・遠非平衡系の典型例と考えられます。プラズマを 制御するためには、プラズマの複雑な挙動を支配する物理を 理解することが不可欠であり、これらの解明が研究の目標と なっています。本研究室には理学部物理学科を起源とする 長い歴史があり、世界の第一線で活躍されている優れた 研究者を数多くの輩出してきています。学生は、 理学系研究科 物理学専攻 及び 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 より受け入れており、 研究室は東京大学ばかりでなくいろいろな大学出身の学生により 構成されています。また、当研究室は実験系の研究室ですが、 理論研究を行っている大学院生もいます。

実験は主に東大柏キャンパスの実験棟に設置されている、 TST-2球状トカマク装置 を用いて行われています。 この装置は平成11年に完成し、日本の球状トカマク(ST) としては最大のものです。この装置で高温・高密度の プラズマを生成し、以前より核融合条件に近い領域での 実験が可能となりました。主要な研究テーマとしては、 STプラズマの安定性、プラズマ波動を用いた加熱や 電流駆動、熱・粒子輸送過程の解明およびその制御等 があげられます。またこれらの研究に不可欠な各種 先進的計測機器(例えばプラズマの密度・温度測定、 揺動測定、波動計測等)の開発研究も行っています。

このほか、より大型の装置である 日本原子力研究所の JT-60Uトカマクや 核融合科学研究所 の LHDヘリカル装置 において、波動を用いた加熱・電流駆動実験や、プラズマ の熱輸送低減現象(輸送障壁の形成)の解明に関する 共同研究を行っています。さらに、 プリンストン大学プラズマ物理研究所 の NSTX球状トカマク装置 におけるプラズマの高ベータ化 (核融合反応高効率化のため、プラズマの圧力と閉じ込め 磁場の圧力の比を大きくすること)、電流駆動実験、 ならびにマイクロ波を用いた新計測法の開発に関する 共同研究も実施しており、世界的視野を持った研究者の 育成を目指しています。