科研費挑戦的萌芽研究

光トラップ型マルチパストムソン散乱計測器の開発研究
(平成24年度)

目的
 トムソン散乱計測は、プラズマ中に高強度パルスレーザーを入射し、電子による散乱光のドップラー広がりから電子温度、散乱強度から電子密度を測定する手法であるが、低電子密度では、散乱光が弱く測定が困難である。そこで、ポッケルスセル、2枚の鏡、偏光素子から構成される光トラップを製作し、レーザーがプラズマ中を何十往復もするようにして、散乱強度の増強を行う計測システムを開発する。これを球状トカマク装置TST-2に適用し、低電子密度である非誘導高周波立ち上げプラズマの電子温度、電子密度を計測して、プラズマの基本的特性である平衡配位の再構成、高周波の伝搬・吸収などの波動物理の研究に役立てることを目的とする。


研究実績報告書


研究成果概要

 高周波波動により生成された低密度プラズマでは、散乱強度が密度に比例するトムソン散乱計測は困難である。この問題を解消すべく、一回の測定でレーザーがプラズマ中を同軸上で数回往復する光トラップ型マルチパス配位のトムソン散乱計測システムの開発研究を行った。この手法では、2枚の凹面鏡で構成されたトラップへの入射と閉じ込めを偏光方向を制御することで実現する。光トラップ型マルチパス配位の利点は、同軸であるために、散乱点が固定されていることと、効率の限界が光学素子の透過率・反射率のみに依存する点である。一方、欠点は、同軸であるために、偏光を制御するポッケルスセルの動作が正確で高速でなければならない点と、実効的に非常に長い伝搬光路中で、光学素子に損傷を与えないように、ビーム伝送の厳密な管理が必要であるである。
 本研究では、高電圧高速MOSFETを用いたポッケルスセル駆動回路を製作・設計し、20ns以内に偏光方向を90度変化させることに成功した。さらに、各光学素子のビーム径に対する制限、散乱点のでのビーム径に対する制限を満たす長距離伝搬配位をビーム伝送計算によって求めた。また、各素子での反射・透過効率を実測し、それらを元に計算した結果、4往復で5倍の散乱強度の増加を見込めることがわかった。今後、実際のマルチパス配位でのパルス測定、プラズマ測定を予定している。



主要投稿論文

学会発表


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