江尻晶の研究活動


プラズマの特徴
 プラズマは荷電粒子の集合である。各粒子は電場と磁場を自ら生成すると伴にこれらを通して相互作用をする。これらの相互作用は遠距離までおよび,プラズマは集団的な振る舞いを示す。一方,プラズマ中の温度,圧力などの不均一性は,不安定性を引き起こし,プラズマは均一な状態,あるいは熱平衡状態に近づこうとする。ところが,高温のプラズマでは,衝突,拡散,散逸が小さく,熱平衡状態,均一な状態からはるかに離れた状態が維持される。このようなプラズマは従来の統計力学で記述できるような性質のよい乱流ではなく,また,少数の自由度で記述できるようなカオスとも異なる。
 これらのことからプラズマは強い非線形,非平衡な系と言われ,従来の線形な系とは全く異なったアプローチが必要である。強い非線形性,非平衡性はプラズマ中の揺らぎとなって現われる。ところが,プラズマは非常に高温であるため揺らぎの直接的な測定は難しい。そこで,新しい測定方法,新しいデータ解析方法が求められている。
研究略歴

本教官は,東京大学のREPUTE装置を用いたイオン加熱の研究を行った後に,核融合科学研究所において,JIPP TII-U,CHS装置において,マイクロ波,遠赤外レーザー計測を用いたプラズマの研究を行った。また,当研究所の大型プロジェクトであるLHDにおいては,マイクロ波,遠赤外光計測を担当し,計測機器の研究開発,建設を行った。1998年より東京大学において高瀬教授とともに球状トカマ装置を用いた研究を行っている。

球状トカマクの研究

球状トカマクでは,小型でも高いプラズマの性能(温度,密度など)を得られるという可能性がある。我々の研究室では,早くからこの可能性に着目し1993年より,TST装置を設計製作し,1995年より実験を開始した。またプラズマの性能をさらに上げるために1998年末より新しい装置(TST-2)を設計し,1999年9月より実験を開始した。現在得られているプラズマは温度100eV,密度1x1019m-3である。この装置は,ほとんどの部分を自分たちで設計し,また組立ての大部分も自分たちで行った。その意味では,手作りの装置と言ってよい。

学内外との共同研究

学外においては,マイクロ波を用いた計測に関連して,核融合科学研究所,九州大学他との共同研究のとりまとめを行っている。またCHS装置においては,軟X線分光を用いて実験に参加している。さらに,日本原子力研究所のJFT-2M装置ではプローブを用いた共同研究を行っている。また,学内においては,高温プラズマセンターにおける共同研究を計画している。